歌の花束〜4月の春〜
1987年、金日成(김일성/キムイルソン)主席の誕生75周年を迎えて、全土は祝日の雰囲気に覆われた。
中央と地方では盛大な慶祝大会が準備され、全国的に専門団体が参加する各種祝典が行われ、手紙伝達リレーが始まった。
3月22日、ある担当者が金正日(김정일/キムジョンイル)書記の前に立っていた。
彼は長時間にわたって、4月の祝日を迎えて機関の中で行われる多彩な行事計画を報告したが、基本は体育競技だった。行事計画を聞き終えた書記は、ぽつりと言った。
「ひとつ重要なことが抜けているようだね」
何が抜けたのか!?
担当者は抜けたのが何なのかよくよく考えてみた。
サッカーとバレーボール、バスケットボール、卓球をはじめ球技部門はむろん、象の玉転がし、綱引き、人捜し競争、相撲競技、ユンノリなどの民族競技と遊戯娯楽競技など抜けたものはなかった。
担当者は思い当たる節があるかのように答えた。
「あまりにも細かすぎると思い報告しなかったのですが、表彰の品物も準備しています」
「そんなものではない」
担当者は見逃したものが何なのか、考えに考えたが思い付かなかった。
すると書記は、あなたがたは私の気持ちを十分に知らないようだと述べながら、以下のような内容のことを言った。
「世界の人々が4月の春親善芸術祭典に駆けつけ朝鮮の4月を歌うのに、朝鮮に住むわれわれが歌もなく4月の春を楽しむことは到底できなません。われわれは4月の祝日に歌をたくさん歌って、主席に忠誠の歌をささげなければならないのです。主席に万年長寿を祝願する歌の花束をささげなければならないのです・・・」
担当者は自分の失策に頭を垂れた。
そして祝日準備種目として芸術サークル公演を行わなければならないと考え、手帳にこう書き入れた。
歌の花束を!
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