口号木〜民族の切実な祈り〜
 
 
民族の息子金正日(김정일/キムジョンイル)書記が誕生したという消息は、またたくまに風のように広がっていった。その歓喜の消息を三千里山河へ伝えた記録が、多くの山々の樹木と巨岩にはっきり刻まれている。

1986年末から調査されはじめ、1990年12月まで朝鮮の99の市・郡・区で発見された抗日武装闘争時代の「口号木(구호나무/クホナム=スローガンの木)」は、じつに1万千数百件に達しており、金正日書記について「白頭光明星(백두광명성/ペクトゥグァンミョンソン)」「白頭星(백두성/ペクトゥソン)」「太陽星(태양성/テヤンソン)」「未来の太陽(미래의 태양/ミレエ テヤン)」「二世大統領(이세 대통령/イセ テットンニョン)」「世界の光明星(세계의 광명성/セゲエ クァンミョンソン)」などど称えている。口号木には、金正日書記誕生の消息に接した同胞たちの歓喜が集約され、白頭山から昇った光明星金日成(김일성/キムイルソン)将軍の後を継ぎ、朝鮮を光り輝かせるよう願う民族の切実な祈りが込められていた。

金日成将軍の指揮のもとに、血のにじむ抗日武装闘争を展開してきた朝鮮人民革命軍の隊員たちや国内革命組織のメンバーにとって、金日成将軍は生死の岐路に立った民族の運命を救う唯一の救世主であり、崇高な革命的同志愛と人間的信義で己をつつみ、正しく導く慈父であった。

彼らは将軍の偉大さと人間的魅力に惹かれ、自ら将軍のもとに馳せ参じた闘士であり、その意をていして貢献することを誓った無比の忠臣たちであった。

そうした彼らにとって、将軍の血縁である金正日書記の誕生は、そのまま将軍の革命偉業が引き継がれることを意味するがゆえに、その喜びは爆発的ですらあった。彼らは将軍の天才的な英知と人となり、徳望をそのまま体現した、いま一人の民族の英雄が出現するよう心から願ったのである。

これは将軍の指揮のもとに戦う隊員や闘士だけでなく、すべての同胞たちの一致した念願でもあった。

現代的な宣伝手段を持たない当時において、抗日革命闘士と国内の革命組織のメンバーは、彼らの切々たる願いと民族の期待を込め、全国各地の樹木に数多くのスローガンを刻んだ。


「ああ朝鮮よ、はらからたちよ、白頭光明星の誕生を告げる」

「二千万同胞よ、白頭山に白頭光明星、独立の天馬に乗って現れた」

「二千万同胞よ、白頭光明星が昇った。朝鮮独立の大通運」

「白頭山に金日成将軍を継ぐ白頭光明星、三千里江山に光り輝く白頭光明星万歳」

「白頭山に光明星現わる。白頭光明星、三千里を照らす。みな光明星を仰ごう」

「二千万同胞よ、白頭光明星輝いて、子々孫々白頭光明星を仰ぎ祖国光復をなしとげよう」



同胞たちの喜びは、白頭光明星を金日成将軍の後継者として仰ぐ気高い願いであったし、領袖の後継者を迎えた民族の大通運に対する激情でもあった。

三千里江山のいたるところで偉大な将軍を「太陽」として、その子息を「光明星」、金正淑(김정숙/キムジョンスク)女史を「月星」、そして三人を「三台星」と仰ぎながら、その民族の幸運を「三大通運」「三大自慢」として賞揚したスローガンが続々と発見されたのである。

金正日書記を金日成主席の後を継ぐ民族の太陽として、千秋万代まで仰ごうという同胞たちの熱い願いは、次のような詩にも込められている。


月よ 月よ 明るい月よ

中天にかかった明るい月よ

月に生えてる桂の木

銀の斧で伐り 金の斧で削って

天上世界に王宮を建て

抗日大将 金日成

女将帥 金正淑

白頭光明星

千年も万年も仰ぎ見よう



全同胞の切実な願いと意志を凝縮させ、千古の樹林に力強く刻まれた文字。それは消し去ることのできない歴史の証言である。

このようにすべての「口号木」が栄光にみちた昨日と輝かしい今日をつなぐ歴史の通話口であった。人々はそれを肝に銘じ、民族の宝として末永く伝えるだろう。

 
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