Goods Column, 9


古いカメラにハマる?(その2)

LEICA M3
LEICA M3
前回のコラムに、ちょっと古いカメラにハマりそうだと書いた。なにかに興味を持つと、そのウンチクを知りたくなってしまうのが私の悪いクセで、これも例に違わずクラシック・カメラ関連の文献を読みあさり、そのかなりディープな世界に驚きつつ、魅かれていった。カメラのメカニズムや撮影技術などの本質的なことよりも、カメラ・メーカーのブランド・ヒストリーが気になってしまうのは、これも悪いクセなのだけれど(笑)、ブランドということになれば、やはりライカを抜きには語れないようだ。

ライカ(LEICA)は、ドイツのエルンスト・ライツ社が1925年に送り出したブランド。ライカとはライツのカメラを意味する。希代のカメラ技術者オスカー・バルナック(注1)の手によるこのライカは、今なお主流の35mmフィルムを使うカメラの先鞭であり、乾板写真が一般的な当時では類をみないほどコンパクトで、堅牢なボディを実現した。2本の軸に巻かれたフィルムを囲む横長のボディ、その中央に装着された沈胴式レンズ、上部に配置されたファインダー、シャッター、巻上げダイヤル等の構造とデザインは、機能実現のための帰結であり、またそれは現在の小型カメラの原型でもある。つまりライカ以降のカメラはすべて、ライカのコピーといえなくもない。そして1954年発表のライカM3は、レンジ・ファインダー式カメラ(注2)のひとつの到達点となった。

このようにカメラ界では、まずライカありき、らしい。車でいえばメルセデス、時計でいえばロレックス、のようなものか。もちろんライカの他にも、とりわけドイツにはコンタックス(注3)のような有名ブランドはある。そして、忘れてならないのがニコンやキャノンをはじめとする日本のブランド。もともとライカのコピー路線(注4)からスタートしたとはいえ、多くの優秀なカメラを生み出し、今や日本は名実ともに世界一のカメラ大国になった。ちなみに、ここに至るまでの興味深いエピソードがある。前述のライカ M3の完成度に脱帽した日本のメーカーは、レンジ・ファインダー式カメラに見切りをつけ、現在の高級カメラの主流である一眼レフに路線を変更した。結果としてニコンFなどの名機が誕生し、広く世界に認められるようになったのだという。皮肉なものだ。

OLYMPUS Pen FT
OLYMPUS Pen FT
古いカメラについて知るにつれ、改めて自分が持っているオリンパス・ペンが好きになり、愛着が湧いてきた。小さいながらもアルミ・ダイキャストの重厚なボディ。操作はすべてマニュアルという潔さ。そしてシンプルで、かつクラシックぽさが残っているデザイン。これから古いカメラを趣味とするのに、入門用としてはぴったりに思える。そんなわけで、しばらくはこのペンを使い倒してみるつもり、、、なのだけれど、実は今ちょっと欲しいカメラがある(笑)。それは私のペンの発展型とでもいうべき、ペンの一眼レフ=ペンFシリースだ。世界唯一のハーフサイズ一眼レフであり、ペンタプリズムのないすっきりした軍艦部(注5)、ハーフならではのコンパクトさ、左右非対称のデザインもとにかく魅力的だ。なかでもTTL露出機能(注6)を搭載するペンFTというモデルが欲しい。折りしも、地元のカメラ・ショップでペンFTの中古を置いてあるのを発見してしまった。触わらせてもらったところ、これが、やっぱり、よかった。しかし、値段は76,000円。その個体は程度もよさそうだったし、相場的に妥当なセンなのかもしれないけれど、この道に入ったばかりの私にはちょっと、高価である。でも欲しいなあ(笑)。[1999/6/15]

注1: M3以前の初期のライカは、設計者の名をとりバルナック・ライカと呼ばれる。
注2: レンジ・ファインダー式カメラとは、撮影用レンズとは別に距離を測定するファインダーを備えたもの。一眼レフが一般的になる前は、高級小型カメラの代表であった。
注3: コンタックス(CONTAX)は、カール・ツァイス財団傘下の巨大メーカー、ツァイス・イコン社がライカに対抗して1932年に送り出したブランド。ツァイス・イコンは東西ドイツ分裂そして統合の紆余曲折を経て、現在はコンタックス・ブランドのカメラは京セラで製造されている。
注4: デザイン的にはキャノンはライカに、ニコンはコンタックスに似ていた。
注5: 軍艦に似ているので、ボディ上部のことをこう呼ぶらしい。
注6: TTLは、撮影レンズを通った光の明るさを測定し露出調整する方式。

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