Farewell / 別れ〜おわりに


BXを乗りかえる決心をした。妻が普段運転する機会が増えたため、あまり心配のないクルマにしようというのが最大の理由だ。けっしてBXに飽きたわけではない。たしかに、10年を目前にして少し故障の回数は増えてきた。しかしまだまだイケルと思っていたので、正直言って未練、未練なのだった。とはいえ、いつか別れの時はくる。それならば少し未練のあるほうが、思い出も強くなろうというものだ。幸い、よい引き取り手も見つかった。その方はボビンBXから乗りかえてくださるそうで、そういうわけだから不安はまったくない。きっと大事にしてもらえることだろう。

総走行距離は66,456キロメートル。10万キロには程遠かったけれども、その間一度も立ち往生のような大トラブルはなく、これは特にプジョー製エンジンの耐久性と信頼性をあらためて感じる。そしていつまでたっても古臭くならないボディスタイルなど、ソフト的な耐久性もバツグンであった。もちろん、いろいろ困ったこともあった。いつ逝くかもしれぬZF製のATに怯え、段差をのり越えるときにはオナカを擦らないように気をつかい、そして車庫の床にLHMのシミを見つけたときのガックリ感。しかしそれらのことも、すべて今では些細なことに思える。逆に楽しかったことも数知れない。FBMなどのイベントに参加したこと。ツーリング中のシトロエン達とすれちがって挨拶を交わしたこと。荷物を満載したロングドライブの帰り途、妻と2人の子供が眠りこける中で、自分は一度も休憩することなく、しかし快適なシートのおかげでさして疲れもせず、ハイドロのたおやかな動きに身をゆだね、夕陽で長くのびた車の影を見ながら、ただひたすら走りつづけたこと...。とにかく趣味性と実用性のバランスが最高であり、これほど自分にピッタリくるクルマは、ちょっと他には考えられない。だから、ほんとうに最後までプライドを持って乗りつづけることができた。ありがとう、BX。[2000/11/20]

BX and Focus
新しい愛車、フォーカスと。



その後のある日。前日の仕事の疲れでボヤけた頭で車庫へ向かう。そこには見慣れぬクルマが佇んでいる。ドアを開け、乗り込み、キーを捻る。エンジン音に耳を澄まして待つことしばし...。そして気づく。

    「そうか、もう車高が上がるのを待たなくていいんだった。」

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