このページでは、『性愛手帖』(荒垣恒政 著・モダン生活社/昭和28年刊)より
艶語事典として収録されているものを、語彙そのものから、その語彙についての解説文まで全文をご紹介(引用)します。また、ここにあげられた語彙や解説文を読むだけでも、当時の風俗を伺い知ることができ、たいへん楽しいです。
この本はとてもおもしろい本で、書かれた方は医学博士なのですが、性の知識について、大部分は、性病についての本なのですが、とてもわかりやすく、性知識だけでなく、恋愛についてや、はたまた誘惑の仕方まで…。特に、「年頃になって色気(性欲)が出るのは極めて自然なことである」ということが、きちんとかかれている所など、現代の医学での常識とは若干違いなどがありますが、子供に教えたい部分でもあります。
*ここに掲載するにあたって、旧字などは適宜変更しました。*なお、現代では不適当と思われる言葉もありますが、原文のまま掲載しました。*著作権など問題がありましたら、ご連絡ください。
アベック・タイム…日本語は重宝なものですね、アベックはフ
ランス語、タイムは英語。二つ合わせたこの新日本語は、ダンスホールやキ
ャバレー等で、恋人達を愉しく躍らせるために設けた”御同伴の時間”です
。
アベック・広場…先刻御存じの宮城前広場の名称です。今年の
メーデーの集合所として政府から拒否されましたが、三々伍々、皆様のため
の散策には、一応黙認された芝生が萌え、翠緑がしたたる快い憩いの広場で
す。ついでながら”アベック苑”というのを御存じですか、所は同じく東京
四谷の秋の菊の”新宿御苑”が終戦後一般に解放されて、特にサンマー・タ
イム(*サマータイムを指している)の午後八時位まで、心ゆくまで二人の
物語のために設けられたような、美しいパラダイスです。
アミ…恋人、愛人、情人等を意味するフランス語、同じようで
もフィアンセは許婚者、少し意味がはっきりしすぎますね。むかし、といっ
ても昭和三、四年頃流行ったジャズ・ソングの一節に”私のラバーさん酋長
の娘、色は黒いが南洋じゃ美人……”の唄の恋人と同意で英語で「アイドル
」が恋人のこと。偶像、崇拝される人といった意味から転じたものですが、
殆ど使われませんね。御参考までに…。
アンブラッセ…抱擁、接吻の意味でフランス語。
アヴァンチュール…本来の意味は冒険ですが、転じて恋愛上の
冒険、スリルを伴う情事を表現します。俗に若き男女の”火あそび”といっ
て、心臓までこがしかねない熱々の恋愛等当事者にとっては、危険が伴う程
興深いようですね、やはりフランス語。
アブレル氏法…食塩水を腹壁から子宮腔内に注入して行う”妊
娠中絶法”の一種です。
淫責…ここでこの語の定義を述べようとするのではありません
。物の本に「金を受取って肉体関係を許すのが淫売ならば、結婚はすべて淫
売である。その証拠には、結納という風習がチャンと残っているではないか
」とさる博士が強調しています。結婚はとにかくとして、インバイ即ちヤミ
の女達は終戦後の日本において、大流行した女性の新商売ともいえましょう
。昔のものは、船饅頭、夜鷹、白首等ちょっと怖いみたいですね。
インポテンツ…陰萎のこと。夫婦生活、広義には性生活を完全
に行うことの出来ない男の症状です。昔は小田原提灯といったものです。即
ちイザ鎌倉という時に彼女を失望させる気の毒な現象を起こすからです。戦
傷や何かで殆ど致命的な場合もありますが、性器の機能障害の一種で、性交
不能症(陰萎)と受胎不能症に大別されます。東西の文芸作品に、インポテ
ンツを夫に持った女性を描いた作品が少なくありません。それは年増のマダ
ムの浮気の原因となる理由を余す処なく描写しています。例えばケッセル(
フランスの作家)の「昼顔」といい、ロレンス(英の作家)の有名な「チャ
タレイ夫人の恋人」といい、不遇な良人を持ったばかりに健康な妻が犯す愛
欲の種々相を巧みな芸術作品に描いているのです。日本の作家では、葛西善
蔵の「不能者」という小説をはじめ、戦後は肉体派文学の勃興につれて、若
い作家たちが、このテーマ(筋書)を捉えて、いやという程書きなぐってい
ます。
優生手術…いまわしき悪質遺伝の血統を断絶、防止してしまう
目的をもって行う手術。卵管、輸精管など、男女双方の場合共、生殖を不能
にさせてしまいます
イット…英語の”それ”という意味から転じて”性的魅力”の
ことです。かつて昭和の初め、一世を風靡したアメリカの美貌スターのルド
ルフ・ヴァレンチノと同様有名な女優クララ・ボウがイット女優として鳴ら
したものです。その頃のアメリカの女流作家で、エリナー・グリーン女史の
”イット”というモダン恋愛指南書が翻訳で出版されていますが、要するに
、あれはイットのある女だといえば、色っぽい女だという意味です。現代で
はむしろ”セックス・アピール”があるとか、ないとかいう言葉にとって替
わられてしまいました。
ヴァギナ…膣のことです。尾崎士郎の小説(小説新潮掲載、後
暁書房刊)「ホーデン侍従」で、「ペニス傘持ちホーデン連れて、行こよヴ
ァギナのふるさとへ」でも有名な語です。ヴァギナはラテン語で、本来は刀
の鞘を意味した言葉ですが、十七世紀頃オランダの解剖学者グラーフが、膣
の意味に使ったのがはじまりとなりました。
ヴァルヴァ…陰門すなわち膣のことです。同じくラテン語です
。
ウテルス…子宮のこと。原語は、ラテン語のウテル(袋)から
転化して来たドイツ語。
ウィンク…秋波(ながしめ)、色眼、片眼をつぶって、恋人同
志が表情を送る信号の一種とでもいいますか。英語です。
ヴォルプタス…性快感のこと。性器に起こる快感、何等かの作
用で充血、膨張を生じて快感がおこるわけです。ラテン語。
ウェット・ドリーム…英語、夢精のことです。病的でない限り
、健康体の男性に、艶夢を伴うと否とにかかわらず、月一、二度の夢精は何
等心配はいりません。ボリッションともいいます。
エロチック…英語、色っぽい、肉欲的性愛的の意味。
エス…女学生の同性愛の相手。英語のシスターの頭文字から転
用。
エロチシズム…色情。肉欲主義のこと。本来は、万葉集の恋歌
のようなものが本当のエロチックものであるが、いつのまにか現代人のいう
意味は変わってしまっている。恋愛は原始的な意味で、性欲的な本能の悦び
と深い関係を持つ人間の感情の基本的なものといえるのです。したがってエ
ロチシズムは本来明朗なものであるべきなのに、戦後日本の肉体派文学の流
行につれて煽情的な小説で、単に劣情をそそるようなのは、健康なエロチシ
ズムとはいえないでしょう。
永久避妊法…避妊は大別して、一時的なものと永久的なものと
があります。一時的に妊娠できぬようにするのとは違い、永久避妊法には、
両側の卵巣にX線を照射したり、または手術により、卵管をしばって、
卵子が通過できないようにしてしまう方法があります。睾丸や卵巣を摘出し
てしまうのは避妊法というよりすでに新種法になります。
エロマニー…ドイツ語。英語ではエロトメニア。色情狂のこと
です。「エロ」とマニーの合成語で、エロはギリシャ神話の恋愛の男神「エ
ロス」から出た言葉で、色情を意味し、マニーは気違い、狂人の意味です。
色欲が病的に、異常に昂進し、性欲が過度に旺盛となり、それを充たすこと
によって、いっそう快感をはげしく感じる症状があります。この淫乱症のほ
かに色情狂には、種々の型があり、むやみに異性の体に触れたがるのや、ま
た、ズロウース、おこし等女性の肌につけてものを盗んでまでも蒐集するな
どさまざまで、精神病学的にも大きな問題を提供しています。
エンゲージ・リング…英語、婚約指輪。結婚約束のととのった
男から許婚の女性に贈ります。それを左手の薬指にはめるのが常識です。そ
んなもの貰った事もないから、知らないわでは決してレデーの自慢になりま
せん。
エチゼン…(越前)包茎の略称。
エテキチ…(得手吉)男根(ペニス)の異名。
オナニー…フランス語、自慰または自涜のことでマスターベー
ション(英語の手淫)と同じ意味です。旧約清書にあるオナンが、その妻に
対し、今日でいう膣外射精すなわち中絶性交法の一種を行った故事から、こ
の言葉が生まれました。そして、一七四八年イギリスの医師ペッカーが、手
淫は心身に大害ありと主唱して「オナニア」という著書をあらわしたのが、
この言葉のはじまりです。その後オナニーの害悪が、伝統的に青年男女に警
告されてきたものですが、近代医学は殆どこれを認めていません。強いてい
えば、脅迫観念を与える点、あるいは種々対照を妄想する頭脳の疲労過大の
害の方が、自慰行為そのものより有毒といわれます。要する一般的には何ら
心身に害のない健康的な生理現象なのですが、精神力薄弱な青少年時代は得
てして習慣性となるのが普通で、過度の場合は脳神経衰弱を招来します。
オヴァリウム…ラテン語で卵巣のことです。卵巣は、テステス
・ムリエグ(女の睾丸)とよばれ、そこから女の精液が出て、男の精液と混
合して胎児が出来るものと思われていたものです。実は卵巣の中から卵子(
オーヴム)が生成するのを発見したのは、十九世紀にはいってからの事です
。
荻野氏法…避妊法の一種です。荻野久作博士により、女性の卵
巣から卵が出てくる日、すなわち排卵日は、普通次の月経の始まる十二日か
ら十六日前に限られているという説が発表されました。これは男性の精子が
、女性の膣または子宮内で、生きてる期間が三日間とすれば、受胎期間は僅
八日にすぎない。即ちこの八日間さえ性生活を行わなければ、妊娠は絶対に
避け得るというのですが、事実は絶対的のものではありません。
オチャワン…(お茶碗)女子の局部の毛の全然ないものをいい
ます。京阪神地方慣用方言。
オハシ…(男端)陽物のこと。
オトシアナ…(陥穽)女陰のこと。
オハチ…(お鉢)臀部のことですが広義には陰部をもいいます
。
オハナ…(お花)女学生用語。寵愛する事および寵愛する者の
意。
オヤマ…(お山)京阪地方の方言でお女郎さんのこと。
オビヲトク…(解帯)即ち肌身を許すこと。
オメ…(男女)女学生間で同性の恋をしている者をいいます。
その多くはもちろん上級の女生が下級の美少女を愛する場合が通例です。
カーテン・レクチェア…英語、妻が寝床の中にいながら亭主に
いうおこごと。まったくかかあ天下の亭主にとってはやりきれぬこと古今東
西人情に変わりなしというやつです。
カップル…英語、一揃、一対、延いては恋人同志、夫婦の意で
す。ついでながらカップル・スイサイドといえば心中のことです。
カレツザア法…これも避妊の一方法。英国の有名はメリ・スト
ーブス夫人がこれを推賞しています。男性の自制によって、射精せずに長時
間つづける性交法です。貝原盆軒によれば、精をとぢて泄らさないことが、
不老長生の必須条件のように考えられていましたが、スペルマ(精子)が脳
へ上がって明快になるなんて、現代医学からいえば、荒唐無稽な妄想です。
ガルソンヌ…フランス語、ガルソンといえば少年ですが、ガル
ソンヌは、お転婆で、モダンで、薄つ葉な女の子の意味です。
ガール・フレンド…未婚の男性から見て、女友達という意味で
す。ただの女友達でないところが意味深です。もちろん恋人である場合もあ
れば、情人である場合もあります。ガール・フレンドと相対的にボーイ・フ
レンドは説明せずともおわかりでしょう。
カンコ…少女の陰のこと。
カブトガタ…(兜形)昔の性具専門店であった四つ目屋発売の
性具の一種です。
カワラケ…(土器)のことが本来のことですが、全国的に無毛
症(もちろん局部の)ことをいう艶語となっています。有名な学者南方熊楠
氏の説に「毛少しあるものにて、河原毛駒の如し」と著書に見えています。
カゲマ…(陰間)昔、特に徳川時代に活躍した若衆姿の美童で
男色を売り、時にはすっかりめかした女装で、当時商家の有閑マダムや、男
子オフ・リミッツ(立入禁止)の奥女中達の対照となりました。男色(ソド
ミイ)の項を参照してください。
カイチョウ…(開帳)女根のことをいうのですが、中国地方で
は交会のことを「おかいちょう」といっています。もっともおかいちょう又
はは御開帳は、例えば「江之島弁財天御開帳」「何々観音御開帳」という、
平時はめったに見せない秘仏や尊像を、一年のある期間、あるいは何年目か
に開扉して、信者や参詣者に拝ませる意味から転じて、めったに開けれぬと
ころの意味にからんで、女性との関係をいいあらわす。全国的な俗語になり
ました。
キャップ…避妊器具の一種で、(英語)、子宮膣部にかぶせる
金属性またはゴム製の帽子です。これによって、子宮膣内へ侵入しようとす
る精液をせきとめるわけです。
キス…英語ですが、どうも日本式発音でキッスといわないと気
分が出ないらしい。フランス語のペーゼ、ドイツ語のクスみな同じ接吻の意
です。接吻の起源は「咬み吸いこみ」にはじまり、咬むことは、原始的なも
のは古いが、欧米の儀禮的、あるいわ親子兄弟の愛情の表現としての接吻は
、比較的新しく中世期頃に生じた習慣です。
クリトリス…ギリシヤ語、陰核、陰挺のことで、もっと卑俗な
通称はここでは申しません。ギリシヤ語のくすぐったいという言葉「クレイ
トリス」が語源であります。アメリカのストーン夫妻の著書「結婚教室」に
よりますと、クリトリスは女性の性感の主要点で、性行為以上にクリトリス
の刺激によって女性はクライマックスに達すると説いています。コイッス(
性交)中クリトリスは、直接刺激を受けることは稀であるが、しかし男性性
器と接触することは当然で、このクリトリスと膣口との距離が結局女性の性
感と至大な関係をもっています。普通クリトリスは、膣口の上方一センチほ
どの距離にあります。ストーン夫妻が多数女性について測定した結果は、一
センチから二センチ半が大部分で、平均一センチ半となっています。結局こ
のクリトリスと膣口との距離如何が、彼女のコイッス時に、クライマックス
に達し得るか否かに、有力な関係をもっているわけです。このようにクリト
リスは、性感をつかさどる有力器官であることがたしかですから、ここに微
妙な影響を与える男性の性愛技巧の稚拙如何が問題となります。
クーパー氏線…男子尿道の後部にある豌豆大の粘液線です。性
的に興奮すると、アルカリ性の透明で、極めて粘滑性の粘液を分泌し、尿道
内を清掃すると共に、亀頭を滑らかにし、膣への挿入を自在ならしめます。
もっとも色情興奮しただけでこの分泌は起こります。
クライマックス…英語、元来これは性的用語ではないのですが
、オルガスムスに代用される語で、コイッス時における快感の最高潮、性境
、頂点を意味します。普通男性は、一回のコイッス時に、射精と同時に一回
きりのクライマックスを経過するだけですが、女性の場合は、二、三回はお
ろか、はなはだしいのは、数回のクライマックスに達するといわれます。オ
ルガスムスはラテン語の「液を充満させる」ということが語源で、性器内に
血液が充満し、勃起が起こり、快感が招来されるのです。
クランク…月経のことをメンストラチオーンとかモーナーツフ
ルスとかいうのは医学用語ですが、普通には極簡単にクランク(病気)とい
っています。
コイッス…性交。一緒にゆく、お互いに逢うというラテン語が
もとになっている。コイッスの医学的意義は、男性性器を女性性器に挿入し
、摩擦運動を行い、射精することにより目的を終了します。
コイッス・インタラプタス…中絶性交のことです。(ドイツ語
)。射精する直前に膣外へペニスを除去しますが、そのほかは普通にコイッ
スを行う方法です。いってみれば、もっとも、原始的な、簡単な避妊法です
。この方法をつづけると男性は神経衰弱、女性はヒステリーに罹るというが
、統計的にはそれほどの弊害はないとされています。
コケット…(英語)色っぽい女のこと。男たらしのこともいい
ますが、多情多淫の意味もあります。この語の形容詞がコケチシュ。あだっ
ぽい、色っぽい、なまめかしい意。
コンドーム…十七世紀にイギリスの医師コントンが羊の腸管か
ら避妊用のサック(フィッシュスキン)をはじめてこしらえたので、このサ
ックはコンドムと呼ばれたのです。十八世紀に至り、上下の社会層をあげて
淫風蕩々たるフランスでは、このイギリス製コンドームが盛んに歓迎された
そうです。十九世紀になって、腸製コンドームはゴム製になり性病予防に一
大貢献をしまいした。売笑制度が大衆化し、娼婦の横行がはげしくなった二
十世紀になって、コンドーム自体も改良進歩していよいよ斯界の寵児として
愛用されて今日に至っています。避妊用、性病予防衛生器具としてこれ程安
易に使用されたものは、他に比類がないでしょう。実際においてもそうです
が、精神的な意味も重なって性感が減殺されるという向もあるが、極上質の
薄手を選ぶか、我は数回使用ができる精選されたフィッシュ・スキンを使用
すれば、多少高価につきますが、殆ど使用感は変わらぬものです。
コンセプション…(英語)受胎のこと。受胎現象は、女性の膣
内へ射精された精子が、自己運動により子宮を通過し、卵管までさかのぼり
ます。一方卵巣から排出された卵子は、一度は腹の中に出ますが、卵管前綵
のひろげた手に受けとめられ、卵管の蠕動運動と、卵管の内側の氈毛の運動
によって子宮の方へ運ばれますが、多くは卵管内で子宮からさかのぼってき
た精子と結合します。これが受胎です。普通卵細胞(卵子)の中には二つ以
上の精子が入るのを防ぐ生物学的仕掛があって、卵子の周囲にいくら沢山の
精子が集まってきても、結合するのは一つだけです。
コブマキゲイシャ…(昆布巻芸者)チョンの間の淫を売る芸者
のこと。帯のまんま転ぶところから、にしん或はごぼうの昆布巻に似ている
のでこの語が出ました。反対に着物をすっかり脱いで転ぶのを「夏みかん」
といい、皮を剥ぐというところに意味があるそうですが、少しこじつけのよ
うですね。
サジズムス…(ドイツ語)変態性欲の一種で加虐性変態性欲の
ことです。普通男性に多く、女性に対し、精神的肉体的苦痛を加えることに
より性的快感をむさぼる異常性欲のことです。例えば女性を裸にして鞭うっ
たり、天井からつり下げてみたり、焼火ばしを肌に押あてたり、衣服を汚損
したり、はなはだしい場合は惨殺してしまう怖しいのがあります。これの反
対がマゾヒズムで、被加虐性変態性欲のことです。
サイノロジー…(心理学)をもじった言葉です。女房に甘い亭
主のことで、もちろん和製外語。普通には略してサイノロといいますね。
殺精子剤…精子を殺す力を持つ製剤です。醋酸、酒石酸、乳酸
、昇汞、リゾール、キニーネ其他のものがあります。避妊薬として使用され
る目的が主ですが、兼ねて防毒、消毒用として用いられます。
サンガリズム…アメリカのサンガー夫人の唱えた産児制限論です。ご承知の様に、生めよ増やせよで鳴物入りの時代の日本政府は、サンガリズムには手きびしい弾圧を加えました。現在のサンガリズムは、単に産皃制限という狭義の解釈を離れて、子供は何人までなら欲しいかというような問題も含めて、家族計画という新しい呼びかけが展開されています。
サフオ…紀元前六世紀に、ギリシヤに生まれた女流抒情詩人です。その流麗な詩の中に同性愛の性行為を謳っているようなことからして、サフオの愛といえば、同性愛の同義語となっています。
サワリ…(障)月経のことです。
サラ…(皿)膣穴の浅い女陰のこと
サマ…(様)あなた。あの方。ぬし。いとしいひと。俚謠のうちにも「サマを寝かせで……云々」とうたっていますね。
サヤアテ…(鞘当)男同志が一人の女を手に入れようと争って、衝突(喧嘩)すること。これは芝居の不和伴作と名古屋三郎との鞘当ての狂言からおこった言葉です。
サネドコ…(実床)男女が共寝する寝床。
サリジョウ…(去状)夫婦が離縁するとき、その旨認めて夫から妻へ渡す書状。離縁状、即ち三下り半のことです。
サービス…(英語)本来の意味はもちろん奉仕ですが、商店はこれを、大売出しに正札より安く売るとか景品をつけたりする意味に使い、艶語ではこれを性的なもてなしの意味に使っています。艶笑街、社交喫茶等でのエロ・サービスがこれです。
サトナレ…里は色里、遊里です。その遊里風習に馴染めることをいいます。
サトスズメ…(里雀)遊里にしげしげ足を運んでいる人、即ち遊野郎のことです。
サトコトバ…(里言葉)その昔の遊郭で遊女たちが使った「……ざんす」「……でありんす」等独特の廓言葉です。
サイカチ…(細滑)僧侶間の艶語で、色欲のことをいいます。きめ細やかで滑らかな女子の肌からきた言葉です。
サイ…赤ん坊の陰部。
サイズ…(英語)物の大きさや型をいいあらわす意味ですが、艶語では、男女にかかわらず、その陰部の大きさをいいます。
ザコネ…(雑魚寝)古来からの風習ですが、沢山の男女が入りまざって寝ること。もちろん男ばかりの場合もいいます。
ザイソクマゲ…(催促髷)島田髷のことです。かつて婚期に近づいた娘は、いいあらわしたように島田を結ったことから起こりました。
サイク…(細工)男女の肉交をいう秘語。
人工妊娠中絶…病弱その他の理由により、母体の健康と安全のために、妊娠七ヶ月以内の胎児を、人工的に子宮から取り去ることをいいます。法律的には、非合法的に闇的にこの手術を試みることを堕胎と呼び、医学的には”犯罪流産”と称しています。
シヒリス…(英語)梅毒のことです。この病原菌は、スピロヘータ・パリーダといわれ、一九五〇年に医学者シャウデンが発見しました。第一期から第四期まであり、症状は極めて複雑です。対症療法として、日本の蓁博士とドイツのエールリッヒ博士の協力により六○六号(サルパルサン)が発見されてから革命的な治療効果をし、その後、第二次大戦後の今日は、ペニシリン、ストレマイシン等の併用による治療法も試みられ、画期的な成功をおさめています。
シャン…一応みめ麗しい女性すなわり美人のことですね、ドイツ語のシェーン(美しい)が訛って、美人というようになったのです。トテション(とても美しい女)ウンシャン(容姿のまづい女、不美人)などいづれも和製外語の部類です。
シャコウ…(斜巷)すなわち遊女街、色里です。
ジャインカイ…(邪淫戒)佛語から来た言葉です。五戒の一である。男女が妻または夫以外の者と淫事を行うことです。
シジミカイ… (蜆貝)小女の陰部のこと。
シモ…(下)陰部のことです。
シバヒメ…(芝姫)京都でいる辻君の別名。芝生の上に転ぶ姫という意味。関西では一般に遊女を姫と呼ぶようです。橋姫、盆姫等。また姫買いに行くといえば「お女郎買い」に行くことです。
シノヒズマ…(忍妻)現代用語ではありませんが、昔いつた隠し女、囲い者の意味。同じシノビズマ(忍夫)は、間男のことです。
ジタクチ…(下口)陰部のこと。
シツク…女学生用語で、月経のこと。
シナダリ…古語で精液のこと。
シジュウハッテ…(四十八手)相撲の四十八手のように、性交の姿態にも四十八あるというその様々の体位です。「松葉くずし」とか「仏壇返し」とかその他どの名称も粋な、凝ったものばかり。古人はさばけすぎました。
スイート・ハート…(英語)恋人、情婦の意。スイートは甘い、ハートは心臓ですから、心ウキウキ胸ワクワクさせる相手に違いありません。ついでながらスイート・ホームは、愉しい新婚家庭のことはよくご存じでしょう。
スペルマ…精子、精絲、または精虫のドイツ語です。1827年にリューワエンホークという医学者が顕微鏡下ではじめてこの精子の所在を発見確認したのです。性液は1回の射精により、茶匙一杯分程度出ますが、そこには多いときで2憶ないし5憶、少なくても数千万の精子が含まれるといわれます。精子一匹は長さ約600分の1センチというものですから、普通肉眼では見えません。形はオタマジャクシを長くしたようで、丸い頭部に小さい中枢部と、細長い尾から成っています。頭部中枢部には生殖と遺伝に関係ある重要な要素を含み、男女の性を左右する染色体と遺伝原質はこの中にあるのです。尾は活発にはねまわる運動をひきうける役です。女性膣内に放射された精子は、数分後には子宮腔に進入しますが、ほとんど大部分は膣内に残り、2・3時間後には死滅するものと考えられています。しかし性行後子宮または卵管内にどのくらい精子が生存し得るかは、確定的ではないのですが、大体一日あるいは二日、まれには三日位の生存に堪えるものと信じられています。
ステッキ・ガール…ステッキ代わりに、時間ぎめで殿方の散策のお供をして歩く女性。昭和のはじめ、銀座街頭にこの新商売が出現したというので、新聞雑誌で大騒ぎしたものです。もちろん今日のパンパン的存在とわけ違い、一応軽い話題に応対できる教養もあり、喫茶店のテーブルの向かいに置いて正視に耐える標準的美人の容貌を兼備した当時のモガ(モダーン・ガール)的存在でした。もっとも戦後の今日、大阪は心斎橋近辺に、この商売が公々然と復活、散歩の同伴はもちろん、観劇や料亭のおつき合いから、艶長戦にまで、殿方の御意と腕次第という格好の女性がのしていらっしゃるそうです。この反対の立場で、女の、否淑女の腰巾着になって歩く青年を、和製英語でハンドバック・ボーイと称します。
スプーニング…恋人を軽くうしろから抱きしめることです。英語のスプーン(匙)が、重なるようになるので出来た言葉で、スプーンには、甘い男、首ったけなどの意味があります。
ストリート・ガール…街の女、街娼(英語)のことで、要するにパンパン・ガールですな、おどかすわけではないですが、歴史的にはこの発生は極めて古く、今から5000年前の、古代バビロニアにおいて既に街娼は存在し、街ゆく浮かれ男に、いとも妖しき媚をおくったことが、ちゃんと物の本に残っています。
セックス…性、性欲(英語)のこと。ラテン語のセコ(切断する)という動詞から来た名詞で、はじめは雌雄とか男女の意味に使われたのですが、今日ではむしろ社会科学的には男女関係、および性、性欲を意味する広範な言葉として使われています。すでにセックスを筆頭に、スクリーン(映画)スポーツ(運動)の三S時代に加えてスピード(速力-乗物)の四S時代が正に現代の傾向でしょう。
セックス・アピール…性的魅力(英語)前掲イットと同じですが、この語の方がいくらかつよいのです。強烈な色気、挑発的な肉体をさしての適言でしょう。
性染色体…男女の性別を決定する遺伝子のことです。染色体の数は、動物の種によって確定的で、人類の体細胞では、男は47個、女は48個です。生殖細胞が減数分裂すると、男の方は23個と24個の染色体を持つ2種類の精子が出来、女の方は24個の染色体を持った1種類の卵子が出来ます。これが受胎に当たり、染色体24個をもつ精子と、同じく24個の卵子が結合すると、合計48個となって、女の子が出来るわけです。反対に23個の精子が卵子と結合すると生まれてくるのは、47個の染色体を持つ男の子ということになります。
セカンド・ハンド・ラブ…セコハンラブ即ち中古の恋愛、相手がサラ(新品)でない場合の恋、既婚婦人や、妻ある男に恋した場合もそうですが、そういう有経験者が、新品に恋した場合もやはりセコハンラブなのです。
性ホルモン…生殖線(男性では睾丸、女性では卵巣)から分泌されるものを性ホルモンと称します。脳下垂体から分泌されるものを、脳下垂体前葉および後葉ホルモンと称し、前葉ホルモンは本来的性ホルモンですが、後葉ホルモンはピッイトリンといい、内臓の滑平筋を収縮させるので、陣痛促進、および軽減になくてはならぬホルモンです。因みにホルモンの語源は、ギリシャ語のホルマオ(興奮する、または覚醒する)から来ています。
ソドミイ…(英語)男色、獣姦、鶏姦、おかまのことです。男色の歴史も街娼同様いわく、古代バビロニヤ時代に少年娼婦がいました。中世に至り、武士階級、寺院等の社会層で、男色はますますさかんとなり、日本でも特に戦国時代に全盛期をもたらしたものです。その後江戸時代、わけても300年平和の爛熟期に入った元録の頃の湯島のかげま茶屋は代表的なもので、当時東叡山寺の坊さん連中まで足繁く通ったといわれます。戦後作家で角達也の有名なルポ小説「男娼の森」は伝統的な上野界隈の男娼の消息を描いた代表的な傑作といわれます。もっとも今日男娼は、単なる鶏姦というのではなく、「かきや」とか「尺八」といって、独特の方法で変態的男性を遊ばせるということですが、こうなると一概にソドミイとも称しきれない程、男色の持つ意味も変わりつつあります。
タックル…ラグビー用語から転意、猛烈な求愛、プロポーズする意に用いられます。
タッチング・システム…(英語)思春期の青少年が映画館や劇場、電車内等人混みを幸い、出来心でそうと自分の躰や手足を異性に触れて、胸をときめかす、いわば軽犯罪ですが、これが中年、老年となると殆ど計画的で、大部質が悪く、しつこくなってきます。
ダンピング…安売、役売り。オールド・ミス(婚期を逸した老婦)になると、子供のある後妻でも、相当条件が満たなくても結婚してしまいます。これをダンピングといいます。まことにお気の毒さまです。
W・ベッド…先刻後存じの、大型の二人用寝台です。ブロンディ漫画でもお馴みの夫婦同禽用のベットです。
ダッチ・ペッサりー…(英語)避妊機具の一種です。最初オランダ(ダッチ)で用いられたので、この名があります。
第二次性徴…男女の躰は、満10才位までは、性器(第一時性徴)以外にさしたる差異はないのですが、少年少女期から思春期に突入して急に男は男らしく、女は女らしくなってしまいます。男のヒゲ、声変り、女の乳房、臀部などの変化は著しく、これを第二次性徴というのです。
チャーム…(英語)もちろん本来の意味は魅力ですが、転じて女性の、否もっとも魅力的な処女の乳房をチャームというようになりました。なおチャーミングといえば、魅惑的、魅力のあるという意味です。
チョンガー…朝鮮語で独身者のこと転じていっぱしの人間となりきっていない、世の中の経験にも浅い未婚の男のことをいいます。
チーク・ダンス…(英語)チークは頬です。その頬ぺたを押しつけあいながら、踊るダンスのことですが、家庭か室内で夫婦か恋人同士で踊る場合ならともかく、ホールやキャバレーでこれみよがしの態では、ちょっとみっともよい図ではありませんね。
チューリップ…の花そのものではありません。チューリップの花の下の長いのを改めて御覧ください。その花(鼻)に偶意して、鼻下長野郎のことをいいます。もっとも色男という意味もありますが。
乳くさい…赤ん坊(おっぱいを含みますね)みたいに無邪気でにくめない女のこと。ただし人は見かけによらぬとか、仇し女に岡つ惚れて鼻毛をぬかれるよう(だまされぬよう)御用心に如くわなしです。
デェアレスト…(英語)デェアといえば、親愛、愛する、これにイストがつくと、この世で一番愛する人となる。即ち恋人、最愛の人の意味です。
デフロレーション…(英語)破瓜のこと。といっても西瓜をとりおとして割るようなこととは違いますよ。性交により処女膜の損傷することです。常識的には結婚初夜の性交で、処女膜が破壊されるのですが、それのみでなく、一般的に処女が男性によって、最初の性の目ざめを経験する現象をいいます。
テイノロジー…サイノロジーに対す蹠的な語句です。もっとも御亭主に首ったけの甘い奥さんなんてそうざらに御座いますかな。オホン!
デカメロン…(十日物語)イタリアの文豪ボッカチオの作になる好色、艶笑物語です。アラビアンナイト(千夜一夜物語)および、金瓶梅と共に世界の三大奇書といわれています。
テステイス…ラテン語で睾丸のことです。英語もこれに似てテステイクルといいます。ギリシヤ人はその外形的相似から、睾丸をディテユモイ(双子の意味)と呼んだものです。しかしテステイスの本来の意味は、証拠ということで、ギリシヤの物理学者、プリニムスが男性であることを示す「証拠」として、初めてテステイスを睾丸の学名として使ったのです。尾崎志郎の小説にある「ボーデン」はドイツ語の睾丸です。ルネッサンス(文芸復興)時代の有名なイタリアの科学者であり、芸術家であるレオナルド・ダヴィンチでさえも、当時は、睾丸の機能を知らず、男性の単なる飾り程度に考えたものです。睾丸は陰嚢の中にあって、左右一個ずつ、形は卵円形で、梅の実大です。この睾丸の中で精子は作られ、他に或種の分泌物およびホルモンがつくられます。この性ホルモンは、直接体組織に吸収されて男性の肉体的、精神的特徴をつくる重要な働きをなしているのです。
ドン・ファン…(スペイン語)女蕩らし、遊蕩兒のことをいいます。本来は人名なのです。即ち十二世紀頃、スペインの南部地方に横行した伝説的人物で、女たらしに稀代の妙手を振った色男(多分ね)ドン・ファンがその語源です。モッツアルトの有名な歌劇ドン・ファンもこれをモチーフ(その作品の主因)としています。
トラブル…事件、情実、特に面倒な恋愛事件のことを指すのですが、今日ではむしろ商取引や事業上あるいは交際上のいざこざ(争い、もめごと)の意味に多く使いますね。
トッチャン・ボーイ…ボーイはもちろん英語ですが、トッチャンは完全に日本語、子供が父親に向かっていう愛称です。結局いい齢として子供みたいな男のことをいいますが、その他に、顔があどけなくて、体が小さいのを愛称的に呼ぶ場合もあるし、また子供が何人もあるくせに、若い娘たちに恋心をおぼえる浮気な中老組のこともいいます。
ナイーヴ…この言葉の発音からしても感じられるように、純真な、生な、飾りけ(虚飾)のないことを意味します。ナイーヴな女性といえば“愛すべき純情娘”です。
ニンフェ…(ラテン語)小陰唇のことです。大体ニンフというのは、水辺や森のあたりに棲むギリシヤ神話の女神や、泉の精の小人たちのことなのです。これから偶意的に小陰唇は尿道口に近いからそう呼ばれたのでしょう。もっともアラビア人は、“恋の甘さ”(ドゥルケド・アモーリス)と呼んだそうですが、仲々風流ですね。解剖学的に説明しますと、小陰唇は内陰唇とも呼ばれ、女性性器の大陰唇(外陰唇)の内側に位置し、膣口、陰核、尿道口を包含しています。湿潤していて、いく多の分泌線から常に分泌物を出します。内陰唇中には、血管、神経、弾力性のある組織が無数にあって、刺激には極めて鋭敏で、またたく間に充血し、勃起の現象を伴いますから、その大きさに変化があります。ですから適当な興奮を与えられると、より固く硬直の状態になります。ニンフェに因み、女の色情狂のことを、ニンフォマニーとも呼んでいます。
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