Goods Column, 1


クロノグラフの使い途

Omega Speedmaster
(c) OMEGA    
私は腕時計が好きで、なかでもクロノグラフは一目置く存在。クロノグラフの正確な定義とは何ぞやといわれると困るのだけれど、簡単にいえばストップウォッチ機能がついた時計のことのようだ。しかし私が単にクロノグラフと言って思い浮かべるのは「アナログでストップウォッチ機能と分・時等の積算計がついた腕時計」というところか。だからむしろもっと多機能のデジタル時計や、積算計のないストップウォッチ機能だけのもの(めったにないけれども)は除く。

なぜクロノグラフに一目置くかといえば、それはまずその精密なメカニズム、そして機能美ともいうべきデザイン性ゆえ。メカニズムについては、これがクォーツではなく機械式であればなおさらだ。あの小さなケースに、何百という歯車とゼンマイなどの機械部品だけを使ってあれだけの機能を実現しているのだから、まさに時計職人達の技術の結晶といえるのではないだろうか。さらには、ストップウォッチ機能の他にムーンフェイズやら永久カレンダーやらが組み込まれた超弩級のモデルに至っては、ため息が出るばかり。

デザインはといえば、ダイヤル上のアクセントになっている2ないし3個の積算計や、スタート/ストップのプッシュボタンなどの独特のディテールがよい。ちなみにクロノグラフ以外で、カレンダーを積算計風に配置しているモデルがあるけれど、あれはちょっとニセモノっぽくて嫌い(笑)。



そんなクロノグラフは、各メーカーから素晴らしい作品が幾つも輩出されているわけだけれど、一般に代表モデルとされているのはこの3つ。

  ・ロレックス・コスモグラフ・デイトナ
  ・オメガ・スピードマスター(上の画像)
  ・一連のブライトリング

デイトナは一時期のブームで異常に高騰し、いただけない感もあるけれど、やはり天下のロレックスのクロノグラフ。完成されたデザインと堅牢性、またポール・ニューマンなども愛用ということで、ブランドイメージも群を抜いている。それからスピードマスターは、人類初の月着陸時に携帯されていたことであまりにも有名。やはり一目でそれとわかるデザインや高性能(なにしろNASAのお墨付き)。アポロ13などの映画や、F1レーサーのシューマッハとのタイアップといった宣伝戦略もぬかりない。おしまいのブライトリングは、いうまでもなく世界初の(腕時計型の)クロノグラフ・メーカー。航空計器でも定評のあるブライトリングは、今なおパイロット達からの絶大な信頼を得ている。これら3つのモデルに共通しているのは、それぞれの存在意義というかバックボーンが確立していること。すなわち、デイトナ=モーターレース、スピードマスター=宇宙計画、ブライトリング=航空シーン、である。だからどれもうわべだけでない重みがあるのだ。

しかし私はというと、これらの代表的モデルにはあまり食指が動かない。理由のひとつは、どれもスポーツ・モデルでありハードすぎるイメージがあるため。私が好きなのはもっとシンプルなデザインで、タキメーターなんかもついてなくてよい。で、ケースはなるだけ小ブリがいい。しかしまあ、食指が動かない一番の理由は、その価格だろうか(笑)。やはりというべきか、なにしろ高い。時計は好きだが、私の思い切れるラインをはるかに越えている。だから自分で使うとなると、スウォッチ・クロノあたりになるのだ。さびしいが(笑)。もちろんスウォッチ・クロノも捨てたものではないと思う。クォーツだが、おかげで正確だし、スプリット・セコンドやら 1/10sec単位測定やらで高機能。そしてスウォッチ・クロノの存在意義は、これはもう素晴らしいデザインにつきる。チープだが逆にそれをグッドセンスに変えてしまう。貧乏人には全くもってありがたいではないですか(笑)。

ところで、クロノグラフの最大の特徴であるストップウォッチ機能だけれど、これを普段の生活で使う機会は、ほとんどない。私も初めてクロノグラフを買ったころは、通勤時間を計ってみたり、高速道路をドライブ中に100m区間をラップしてみたりしたけれど、それはまったく無意味な行為で(笑)、なくて困るということは全然ない。そう考えると、一般人にとってのクロノグラフというものは、積算計の針が動くのを待ち遠しく眺めたり、リセットボタンを押してクロノ針が戻る様を見て喜び、愛でるものなのかもしれない。つまり、自己満足。うーん。

いや、あった。クロノグラフの有益な使い途。私はお昼によくカップ・ラーメンを食べるのだけれど、これの出来上がり時間をはかる(笑)。しかしこれも、私はスウォッチでやっているからまだしも、時価百ウン十万円のデイトナでやった日には、いかがなものか。[1999/1/12]


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